アジェニックス社による臨床試験が進み、腎細胞がんの治療にラクトフェリンと抗がん剤の併用療法がFDAの優先承認審査の指定を受け、今後、乳がん、卵巣がん、メラノーマなどの固形がんへの有効性も期待されるという。アジェニックス社で開発中の製剤は遺伝子組換え技術によりカビが生産するヒト型ラクトフェリンの溶液製剤である。タンパク質製剤なので、当然、経口摂取すれば胃でペプシン消化を受けて分解してしまう。それでも、毎日3g摂取するので、そこそこの効き目があるようである。NRLファーマの腸溶錠であれば、胃で消化分解されないので、はるかに優れているはずだ。しかも、専門的な話になるが、カビが作るラクトフェリンは糖鎖構造が天然型と異なるので、体内動態に問題があること、作用メカニズムが免疫作用なのでヒト型よりも異種である牛乳由来のウシ型の方が効力が強いと考えている。異種タンパク質でも経口的に摂取したものには、経口免疫寛容という仕組みがあって、抗原性などが問題にならないようになっている。NRLファーマは、このラクトフェリン腸溶錠(サプリメント)を用いて、がんに対する臨床試験をわが国でも実施すべく、専門家と相談しているところである。ゆくゆくは、インターフェロンで成功しているように、PEG化したラクトフェリンを医薬品として開発するため頑張っている。ラクトフェリンは、それ自身、全く副作用がないことに加えて、放射線治療や抗がん剤の副作用を防止する作用もある。今後、ラクトフェリンの臨床応用が進めば、がんの治療には副作用が避けられないということが過去の話になる時がいずれ来るであろう。